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顧客接点人材の経験設計 / 善之巡環に根差す事業づくり

事業戦略の考え方

施主にどんな暮らしを届けたいか。その価値を元請が提案でき、流通店が仕事として引き受けられるか。施主・元請・流通店の三者に価値と経済が巡る市場を、メーカーはどうつくるのか。YKK APの新築樹脂窓の事業から、その考え方をたどります。

価値と経済が巡るしくみ
施主
望む暮らしに合うかを選ぶ
元請
その家族に勧める理由を説明する
チャネル(流通店)
見積・納材・施工支援を引き受ける
メーカー三者の仕事を、仕様・品質・供給・保証で支える

次の市場へ採用後の声と、届かなかった理由を設計に戻す

戦略の起点 / 三者の未充足価値

施主が欲しいと思えたとき、誰がその先を担えるか

施主は、暮らしの中で選ぶ

冬の寒さや毎朝の結露には、本人が「仕方がない」と思っていることもあります。いつ、どの部屋で、どう過ごせるようになれば、その人にとって価値があるでしょうか。

元請は、勧める理由を持つ

住宅会社や工務店は、性能の違いを知っていても、目の前の家族に追加費用をかけて勧める理由を説明できるとは限りません。その家で何が変わるかを一緒に考えます。

チャネルは、仕事として扱う

流通店やサッシ店は、見積や発注から現場への納材、施工支援、工事後の相談までを担います。誰がどこまで引き受ければ、手間と費用に見合い、次も頼まれたときに応えられるでしょうか。

メーカーが引き受けること

三者の仕事がつながるように、商品仕様、生産技術、品質、供給、保証を整えます。顧客接点に戻ってくる採用や見送りの理由は、その仕組みを見直す材料になります。

『YKK APの事業戦略の考え方』2〜3頁

新築樹脂窓の事業事例

完成品の窓は、届ける相手によって違って見えた

施主の「当たり前」を見直す

窓辺の寒さや結露を我慢していた施主にとっての利益を、「窓を通じて快適に暮らせること」と定めました。海外の高性能窓を調べ、日本の木造住宅の寸法や納まりに合う形を探りました。

採用にためらう背景を聞く

完成品の窓は、ビルダーには従来の商流や段取りを変える高価な商品に、流通店には組立の仕事を失うように映りました。営業・設計支援・流通の担当者は、それぞれが不安に思うことを現場で確かめました。

信用を、採用できる条件にする

性能を確かめられる資料、設計に使える支援、一棟ごとの配送、10年保証とアフター対応を整えました。元請が施主に説明でき、流通店が現場へ届けられるところまで、窓を扱う仕事を組み直したのです。

採用後の使われ方や、なお残った「扱いにくい」という声が顧客接点に戻る。そこで初めて、提案の言葉、供給条件、施工支援のどこを変えればよいかが見えてきます。

新築樹脂窓の事業事例(7月13日版)5〜7、10〜13頁。顧客接点で本人が担う仕事を読む →

事業を構想する順序

市場が続く条件を、七つの判断で組み立てる

  1. 背景を読む

    世界・社会・政策・技術の変化を、地域の住宅や暮らしに重ねる。これから誰にとって何が重要になりそうか、確かめる商圏を選ぶ。

  2. 施主価値を定める

    どの地域の、どんな住まい手に、何ができるようになってほしいかを決める。本人が不便に慣れているときは、暮らしの場面から確かめる。

  3. 元請価値に翻訳する

    施主に届く価値を、元請が自分の言葉で説明し、ほかの選択肢と比べて勧められる理由にする。

  4. チャネルの仕事に載せる

    流通店が見積・発注・納材・施工支援・保証対応をどう進めるかをたどる。必要な情報が、必要な担当者に届く条件を整える。

  5. メーカーとして実装する

    商品仕様と生産技術に加え、性能の示し方、品質、供給、物流、現場への納まり、保証までを設計する。

  6. 成果が巡るか確認する

    施主の暮らしはどう変わったか。元請は提案を続けられるか。流通店には手間や費用に見合う仕事が残るか。自社と地域に戻るものも確かめる。

  7. 次の市場へ更新する

    現場で断られた理由、使用後に分かったこと、施工・品質上の課題を持ち帰る。地域の違いと照らし、次に取り組む市場や変える条件を選ぶ。

『YKK APの事業戦略の考え方』5頁。エリアチャネル改革の①〜⑩は、こうした仕事を担う人が経験する実務負荷の順序です。

背景と地域差

同じ窓でも、地域が変われば提案する理由が変わる

寒冷地では窓辺の冷えや結露、暖房費が暮らしに響きます。蒸暑地域では日射や湿気、風の通り方がより切実かもしれません。地域を読むとは、施主の必要の大きさと広がり、提案を担う元請、供給できる流通店の組み合わせを具体化することです。

背景を見る10の視点と、それぞれで決めること
世界
海外の住宅性能や脱炭素の動きから、日本で参照する基準を選ぶ。
社会
世帯構成や住み続ける期間、家計の変化から、今後大きくなる必要を考える。
政策
省エネや既存住宅の活用を巡る政策を、地域で取り組む課題と結び付ける。
技術
断熱・遮音・生産・施工支援の技術から、暮らしの変化を実現できる方法を選ぶ。
地域
気候、住宅の種類、価格の受け入れられ方、施工体制から、優先する商圏を考える。
施主
寒さや結露、音、防犯など、本人が普段どの場面で何をあきらめているかを知る。
元請
施主に説明でき、自社の提案や受注につながる理由を見つける。
チャネル
見積から保証までのどこで判断が止まるかを知り、扱い続けられる条件を決める。
メーカー
生産・品質・供給・物流・施工適合・保証について、自社が引き受ける条件を決める。
経済
施主・元請・チャネル・メーカー・地域のそれぞれに何が戻るかを確かめ、継続できる市場の条件を決める。

『YKK APの事業戦略の考え方』4、6頁 8地域の事業環境を読み比べる →

善之巡環と成果三分配

相手に届いた価値が、次の仕事を支えているか

施主が快適になっても、提案や施工を支えた取引先が、かけた手間に見合う対価を得られなければ、次の家族に同じ価値を届け続けることは難しくなります。新築樹脂窓の資料でいう「成果三分配」は、ユーザー・取引先・自社に何が戻るかを見る考え方です。元請と流通店はいずれも取引先に当たります。

新築樹脂窓の事業で見た、成果の戻り先
戻り先次につながる成果
ユーザー窓の断熱や結露の抑制を通じて、日々の快適さや省エネとして価値を受け取る。
取引先元請には住宅を提案する理由と説明する力が残る。流通店には、完成品の供給、発注支援、施工・保証につながる仕事が残る。
自社メーカーには信用、技術、供給の基盤と、市場づくりの学びが戻る。それらを次の商品や支援の仕組みに再投資できる。

事業戦略としては、その動きが続いた先に、地域でよりよい住まいを選べる条件が残るかまでを見ます。

『YKK APの事業戦略の考え方』2、6〜7頁 / 新築樹脂窓の事業事例14頁。善之巡環から成果の行き先を読む →

今後の人材開発 / 企画で使う例

どの立場で、どんな戦略判断を経験するか

同じ事業を考えても、任せる判断の範囲は立場で変わります。支店長と商品企画を担う人を例に、研修後に経験してほしい仕事を考えます。

支店長

担当エリアの新築と住宅ストック、流通店・元請の現状を俯瞰する。新築・開口部リフォーム・グリーンリモデルを広げるチャネル戦略を考え、メンバーに支援先と判断を任せる。流通店と元請の行動を確かめ、戦略と支え方を見直す。

支店長の経験を企画する →

商品企画を担う人

採用や使用の一件を顧客接点の担当者とたどる。何を商品で解くかを選び、案を使う人・提案する人・施工する人に返し、残す仕様と見送る仕様を決める。

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