流通店が担う仕事を比べる
二つの流通店を、何について比べるか。
研究では何を確かめたか
大学生128人が交渉の二事例を読みました。同じ二事例の共通点を比べる群と、一件ずつ別々に分析する群に無作為に分けました。
別の交渉課題の解決案に、事例で学んだ原理を使った人は、比較した群で48%、別々に分析した群で19%でした。
このモデルの実務と照らす
窓流通と木建流通を一店ずつ取り上げ、元請のどの工程を誰が支えたかを同じ問いで聞きます。その違いが、②で注力先を選ぶときの材料になります。
ここでいう経験負荷は、現場から持ち帰った事実を使って、次の判断を本人が引き受けることです。店を比べる、相手に事実を返す、図を囲んで支援を決める。それぞれの実務で起きることを、研究者が実際に調べた場面と照らし合わせます。
誰の暮らしや仕事にどんな利益を届けるか。その出発点に善之巡環があります。
| 参照する根拠 | それぞれが示すこと |
|---|---|
| エリアチャネル改革の 研修設計・実践記録 | ①〜⑩の順序・段階間の往復・y値の推移 |
| 各論文が調べた場面 | 比較・対話・協働・振り返りなど、個々の過程 |
各段階と研究との対応は、本サイトによる解釈です。
流通店が担う仕事を比べる
大学生128人が交渉の二事例を読みました。同じ二事例の共通点を比べる群と、一件ずつ別々に分析する群に無作為に分けました。
別の交渉課題の解決案に、事例で学んだ原理を使った人は、比較した群で48%、別々に分析した群で19%でした。
窓流通と木建流通を一店ずつ取り上げ、元請のどの工程を誰が支えたかを同じ問いで聞きます。その違いが、②で注力先を選ぶときの材料になります。
注力する一店と、変えたい仕事を決める
イタリアと英国で、計759社を対象とした四つの無作為化比較試験を分析しました。事業案の前提を仮説にし、証拠を集めて判断する方法を教えた群と対照群を比べました。
観察期間中に元の事業案を取りやめる確率は、仮説を検証する方法を教えた群で9.8ポイント高くなりました。
「この店なら、どの元請のどんな仕事を変えられるか」を仮置きし、その見立てを変える事実も先に挙げます。③で元請に選んだ理由を聞き、自分の選定理由と照らします。
元請の声を営業に返し、選ばれる理由を確かめる
大学生8組が、仕切り越しに12枚の図形を言葉だけで同じ順に並べる課題を6回繰り返しました。研究者は説明と応答を逐語的に調べました。
聞き手が自分の理解を言葉にして問い返すと、話し手が向きや姿勢の説明を足し、二人で同じ図形を特定するやり取りが見られました。
③で元請が語った「助かった一件」を、④で流通店の営業に返します。何を先回りしていたかを聞き、見方が違えば、その違いを持って元請に確かめ直します。
取引先全体を図にし、社長と重点先を決める
量産品を開発する企業の営業・マーケティング、設計、生産技術、製造の四機能を1年間調査し、図面や試作品を使う部門間のやり取りを観察しました。
同じ組立図から、設計側は寸法の許容範囲や機能を、製造側は部品の向きと組立・検査のしやすさを読み取りました。両者が重視する条件を一つの図で示せた場面です。
⑤で描いた取引先構成図を⑥で社長と見ます。売上を増やしたい先でも、工数・粗利・回収条件を聞くと見方が変わります。その条件を図に戻し、どの先を支えるかを選び直します。
元請の工程をたどり、誰が支えるかを決める
新しい心臓手術の技術を導入した16病院を比較し、関係職種への聞き取りなどから、チームが従来の仕事の進め方を変える過程を調べました。
導入が進んだチームでは、関係職種が一緒に事前練習を行う傾向がありました。実際に試した後も経験を振り返り、新しい手順を改善していました。
⑦で元請の一件を工程図にし、誰が何を待ったかを置きます。⑧で次の受け渡しの担当と時点を決め、一件で試します。受け取った人が何を判断できたかを聞いて図を直します。
役立った条件を見つけ、次の取引先で試す
兵士98人の地上での経路探索訓練で、二つの中隊の振り返り方を変えました。一方は失敗した場面を、もう一方は成功した場面と失敗した場面の両方を検討しました。
続く経路探索課題では、成功と失敗の両方を検討した中隊のほうが、失敗だけを検討した中隊より成績の伸びが大きくなりました。
⑨で進んだ先と進まなかった先を並べ、本人の働きかけ、相手の反応、条件の違いを結びます。⑩で流通店が次の取引先への支援を選び、定例で結果を確かめて条件を書き直します。
③で元請に聞いた事実を、④で流通店の営業に返す。相手が以前より詳しく事情を話してくれたとき、本人は何をもっと知りたいと思い、次に誰に聞いたのか。スタンスの変化は、本人の言葉とその後の行動をつないで読みます。
Grantらは、大学の寄付募集を担う有給スタッフ39人を対象に、奨学生に会って話す条件、同じ手紙を読んで同僚と話す条件、接点を設けない条件を比較しました。
約1か月後、奨学生と会った群では、架電に使った時間と集めた寄付額が他の条件を上回りました。測ったのは仕事を続けた行動とその成果です。
「取引先に好評だった」という感想の先で、本人は、自分の働きかけが相手のどんな仕事に役立ったと捉えたか。その見方から次の問いが生まれ、現場で実際に聞き直したかを確かめます。ここはエリアチャネル改革の実践記録で追う部分です。
Grant, A. M., Campbell, E. M., Chen, G., Cottone, K., Lapedis, D., & Lee, K.(2007). Impact and the art of motivation maintenance: The effects of contact with beneficiaries on persistence behavior Organizational Behavior and Human Decision Processes, 103(1), 53–67.
研修設計の資料では、現場の経験を次の判断に変えること、立場の違う相手と仕事を進めることを、経験学習・状況的学習・越境学習などの観点から整理しています。ここでは四つを取り上げます。
Kolbは、具体的な経験を振り返り、概念として捉え直し、次の経験で試す過程を論じました。研修では「元請が詳しく話してくれた」で終えず、どの問いが、どの場面で役立ったかを考え、次の面談で試します。
D. A. Kolb(第2版、2015), Pearson. Experiential Learning
LaveとWengerは、仕事を担う共同体に参加し、役割を広げていく学びを、徒弟制などの事例から論じています。社長との面談でも、同席した経験と、本人が構成図を示して次の重点先を一緒に考えた経験では、引き受けた判断が違います。
J. Lave & E. Wenger(1991), Cambridge University Press. Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation
AkkermanとBakkerは、異なる実践が接する場で起こりうる学びを、違いの認識、連携、振り返り、実践の変容の四つに整理しました。メーカーと流通店が同じ図を見ても、売上と施工の余力では見えるものが違います。その差を聞き、支援の分担を見直せたかを追います。
S. F. Akkerman & A. Bakker(2011), Review of Educational Research, 81(2), 132–169. Boundary Crossing and Boundary Objects
Edmondsonが製造企業の51チームを調べた研究では、対人関係上のリスクを取れるというチームの認識と、学習行動との間に関連が見られました。研修では、合意後に実行されなかった一件も持ち寄り、誰がどの時点で動けなかったかを一緒に確かめます。
A. Edmondson(1999), Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383. Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams
設計資料との対応 「顧客接点人材の価値向上方針」69頁・73頁。実務で起きた変化は、匿名の実践記録と評価時点別の参照曲線でたどれます。